自動採点システム MATLAB Grader を使った制御の授業~金沢大学融合学域 山本茂教授にインタビュー~
今日はカスターマーサクセスエンジニア(略して CSE )の林さんによる投稿です。
こんにちは。カスタマーサクセスエンジニアの林です。
MathWorks のアカデミア向け製品の一つに MATLAB Grader という MATLAB のコードを自動採点をする機能があることをご存じでしょうか?金沢大学の山本茂教授は、制御の授業の演習課題として MATLAB Grader を使い始めて、こんなツイートを投稿されていました。
今日から始まる授業「ディジタル制御」の演習としてMATLAB Graderを始めてみた。
準備に2日ほどかかったが,コードの自動採点,進捗状況も確認できて非常に便利。#MATLAB pic.twitter.com/UACgi2uoPW
— S. Yamamoto (@moccos_lab) October 3, 2022
そこで、MATLAB Grader を使ってどんな授業をされているかインタビューしてきましたので、ぜひご覧ください。
その前に・・・MATLAB Graderって?
皆さんは、大学時代こんな経験はありませんか? 授業で課題が出され、頑張って提出したものの、戻ってくるのは 2, 3 週間後。返ってきたときには、もはや自分が何を解答したか覚えていない・・。TA(Teaching Assistant)をされたことのある方は、何十人もの学生さんの解答を何日もかけて採点したという経験をされた方も多いのではないかと思います。
MATLAB Grader は、ブラウザベースで MATLAB を使った演習の作成・解答・採点ができるツールです。講師が予め用意した評価項目に沿って、受講者の書いたMATLAB のコードを自動採点することができます。リアルタイムに正誤が判定されるので、受講者の学習意欲を継続する、講師にとっても採点の負荷を低減でき、また MATLAB をインストールせずにブラウザからアクセスできるので、大学の端末室でなくても演習を実施したり、家の PC で課題にアクセスできる手軽さもおすすめポイントです。
金沢大学融合学域 山本茂教授にインタビュー
山本先生、本日はどうぞよろしくお願いします。MATLAB 歴も含めて自己紹介お願いできますでしょうか?
金沢大学融合学域の山本茂と申します。理工学域のフロンティア工学類や電子情報科学類をこれまで担当していましたが、2023年4月新設のスマート創成科学類も担当します。よろしくお願いします。MATLAB は研究で 90 年代から使用していました。研究テーマは制御理論・応用で、MATLAB, Simulink はもちろんのこと最近では Simscape Electrical で電気回路のシミュレーションを行ったりしています。MATLAB は学術論文に掲載する図も簡単に書くことができるのが重宝しています。また、MATLAB というプラットフォーム上にデータ・スクリプト・図が一体に管理できることは魅力の一つで、学生さんが研究を引き継いでいく中で、研究成果を適切に管理できるという点で使い勝手が良いツールだと感じています。
金沢大学では 2022 年の春から MATLAB の大学向け包括ライセンス Campus-Wide License を導入しています。これにより学生さんに MATLAB を使った演習を行うことができるようになりました。私の授業でもデジタル制御・システム制御、実験の三つの授業で今年から MATLAB を導入しました。私の授業だけでなく、学生さんが様々な授業で MATLAB を使って学び、研究室に入ってくることを楽しみにしています。
MATLAB Grader をデジタル制御とシステム制御の授業でお使いだと伺いました。使い始めたきっかけを教えてください。
私の授業では、学生さんに積極的に授業に参加してもらい、手を動かしながら学んでほしいと考えており、以前から演習課題を取り入れていました。Campus-Wide License が導入されたので、これまで手計算をさせていた課題を、せっかくなので MATLAB を使って計算させてみたかったというのが最初のきっかけです。しかしながら学生さんの提出したコードを一つ一つ丁寧に見ていると採点をすぐに返却することができません。そんな中 MATLAB Grader の存在を知りました。一人でゼロから問題作成をするのはなかなかハードルが高いですが、MathWorks の方から、問題作成に参考になるサンプル問題集をもらい、それらを授業目的に合うように手直しすることができたので、思っていたよりも容易に導入することができました。
受講される学生さんは、すでに MATLAB を知った上でこの授業を受けているのでしょうか?
どちらの授業も、電気電子系の3年生向けの授業です。一部の学生さんはこの授業の前に MATLAB に触れる機会はあるのですが、全員ではありません。そこでMATLAB 入門コースを授業の前に受講し修了証を提出するということを必須課題としています。自主学習教材を使うことで、スムーズに授業に入ることができます。
MATLAB Grader を取り入れたことでどのような効果を感じていますか?
以前は手で計算してそれを紙や LMS(Learning Management System)を介して提出させていました。今回 MATLAB Grader を導入したことで、手計算したものを、今度は MATLAB で使って計算・図示することで、結果を確認し学びを深めることができるところがよいと思っています。
また、リアルタイムに採点し、学生さんにフィードバックがすぐできるという点も気に入っています。その場で正誤がわかると学生さんのモチベーションにもつながるようで、正解になるまで繰り返し提出している様子も見られます。以前に比べて学生さんたちが粘り強く演習課題に取り組んでいるように感じますし、実際に全体の成績も MATLAB を使っていなかった昨年に比べて上がりました。ソフトウェアを補助的に使うことで学生さんの力をのばしていきたいと考えています。
MATLAB は Symbolic Math Toolbox を使えば数式計算もできる点も魅力的です。私の授業の中でも、MATLAB Grader の中で Symbolic Math Toolbox を使い、状態遷移行列の計算やステップ応答を求める演習問題を作成しました。
Twitterでは準備に時間がかかったとのことでしたが、MATLAB Grader で問題を作るのは大変ですか?
スクリーンショットにもあるように、MATLAB Grader で解答させるには、学生さんに対し少しガイドをする必要があると思います。今まででしたら「この状態方程式の解を求めよ」などで終わっていた説明を少し詳しく書く必要があると感じています。しかし慣れてくればそんなに時間はかかりませんし、一コマ分の課題は一時間ぐらいで用意できるようになりました。ガイドがあることで、学生さんもやるべきことがクリアになり、積極的に解答しているという印象もあります。
むしろメリットとして、授業の問題集がコードとともに Web 上にアーカイブされているという状況なので、これをひな形にして別の演習問題や期末試験の問題作成もやりやすくなったと感じています。
今後授業をどのように改善していきたいですか?
MATLAB Grader には学生さんの個々の解答をチェックする機能だけでなく、Learning Analytics という何回目に正解を出したか、どの評価で躓いたかなど、演習全体を俯瞰的に把握できる機能があります。また使いこなせていませんが、こういった分析ツールを利用して授業の改善に生かしていければと思っています。
また MATLAB Grader は LMS 連携することができると聞いています。受講生の管理の点でも、学生さんのアクセスのしやすさという点でも使い勝手がよさそうなので、今後検討していきたいです。
山本先生、インタビューにお答えいただきありがとうございました!最後に、先生がご所属される融合学域は、2023年4月に新設される学部(金沢大学では学域とよびます)だと伺っていますが、こちらの学域でも MATLAB 使うことを検討されていますか?
融合学域は、文理融合型で高校時代文系を選択した学生さんも入学します。文系理系問わず、実際に手を動かすことはとても重要です。MATLAB は初学者にも学びやすい言語ですし、学問の内容をイメージしやすい授業作りのために、MATLAB を使った授業も検討しています。文系・理系問わずどんどん使ってほしいですね。
まとめ
今回は金沢大学の山本茂先生に、MATLAB Grader をどのようにお使いいただいているか、具体的な演習問題をお見せいただきながら、詳しく教えていただきました。学生さんが正解するまで演習に取り組む姿は、一生懸命演習問題を作られた先生にとっても、とてもうれしいですよね。
金沢大学山本先生、お時間頂戴しありがとうございました!
関連リンク:
- MATLAB Grader とは:https://jp.mathworks.com/products/matlab-grader.html
- MATLAB Grader のサンプル問題集はこちら:https://jp.mathworks.com/products/matlab-grader/assessment-content.html
- 범주:
- ユーザー紹介
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