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学習意欲の上がる授業は?”英語教育”をデータサイエンス

本日は、MathWorks Japanでデータサイエンス関係を広く担当している田口からの投稿です。

はじめに

こんにちは。アプリケーションエンジニアの田口です。
データサイエンスというといかにも”理系”なイメージがあると思いますが、実は文系の学生も活用されていることをご存知でしょうか?本日は、秋田大学教育文化学部英語教育コースご所属の村上さんに、ご自身の英語教育研究へデータサイエンスを適用された事例についてインタビューを行いました。

この記事のハイライト

  • 生徒の学習意欲を上げる英語授業の要素を、回帰分析により定量的に示し、研究に説得力を持たせた
  • プログラミング未経験だったが、オンライン教材「MATLAB 入門」でMATLAB プログラミングスキルを習得した
  • MATLAB は、簡単なコードで分析結果が綺麗に表示されて楽しく、継続するモチベーションに繋がった

インタビューに応じてくださった学生のご紹介

今回インタビューに応じてくださったのは、秋田大学教育文化学部学校教育課程英語教育コース4年生の村上勇紀さんです。村上さんは、同コース佐々木雅子研究室にて、英語教育の中でも特にCLIL(Content and Language Integrated Learning)という教育手法を学ばれています。CLIL(クリル)とは「内容と言語の統合的学習」と訳され、学習者が第二言語や外国語を学ぶと同時に、特定の教科の内容(例えば歴史、科学、数学など)を学ぶことで、単に言語の形式や文法を学ぶのではない自然な英語習得が期待されている手法です。
オンラインミーティングでインタビューに応じてくださった村上さん
秋田大学では全ての学生・教職員の皆様がMATLAB へアクセスしていただけるMATLAB ライセンスを契約していただいています。村上さんの指導教員の方もMATLAB の使用経験があり「文系もこれからは言語処理、統計、データ解析などのスキルが必要。学生にも、在学中にそれらを学んで理解し、将来に役立ててほしい」と高いモチベーションをお持ちです。今回のインタビューは記事の都合上村上さんのみに行っていますが、研究室の皆さんが、それぞれの研究テーマで”データサイエンス”に挑戦されました。

インタビュー

早速ですが、村上さんの自己紹介をお願いします。

秋田大学教育文化学部学校教育課程英語教育コースに所属している4年生の村上勇紀です。私は主に英語教育について学んでおり、CLIL 形式で、例えば世界遺産の教科と絡めた授業を実施した際の、生徒の学習意欲との関連性について調査しています。

村上さんは英語教育コースに所属していますよね。MATLAB やその他のプログラミング言語に関する経験は元々お持ちだったのでしょうか?

いえ、それまではあまりしてこなくて、今回の卒業研究を始めるタイミングで初めてプログラミングを行いました。ですので、初めて触ったプログラミング言語がMATLAB ということになります。

初めてのプログラミング言語がMATLAB というのはなんだか嬉しいですね。そうすると現在MATLAB 歴は1年ほどということでしょうか。プログラミングも初めての状態から、MATLAB の使い方はどのようにして学ばれましたか?

最初は「MATLAB 入門」というコースから始め、基本的な関数や四則演算(足し算、引き算、掛け算、割り算)などの基本から学び始めました。その後、演習を通じて基礎的な部分を学んでいきました。後から思うと基礎的な内容ばかりでしたが、初めて触れたということもあり、見慣れない関数などが出てきたため、覚えるのに苦労した記憶があります。コース全体を通して、感想としては少し難しいと感じる部分もあり、なかなかの時間を要しましたが、ここでMATLAB プログラミングの基礎が身に付きました。
自己学習コンテンツ「MATLAB 入門」

MATLAB 入門からしっかり学んでいただいたとのことで、難しいと感じる部分もあったかと思いますが、しっかり最後までやり遂げていらっしゃって素晴らしいです。ご研究においてはMATLAB はどのように使用されましたか?

今回の研究を進めるにあたり、生徒の授業内での学習意欲に関連した質問を約20問のアンケートで作成し、その回答をMATLAB などを使用して数値化しました。アンケートの内容としては、授業前の生徒の英語学習に対する意欲、私が行った研究内容やプロジェクトに対する生徒の意欲、そして授業後の生徒の学習意欲の変化などを調査しました。意欲はスコアとして1から6で表し、そのデータをMATLAB に読み込んで解析に利用しました。

授業やプロジェクトへの意欲をアンケートで集めて解析されたということですね。具体的にどういった関数(機能)を使われましたか?

今回の研究では、重回帰分析と近傍成分分析(NCA)を使用しました。重回帰分析では、CLIL 授業の基本概念である「4C」とよばれる4つの要素(Content, Communication, Cognition, Culture)のうち、どれが授業に対する意欲と深く関わっているのかを調査しました。近傍成分分析(NCA)は、アンケートの中のどの要素が生徒の授業内での意欲を構成しているかを調べるために使用しました。2回の授業を行い、一方では自分の研究内容に基づくCLIL を用いた授業法を、もう一方では通常の、主に教科書を使用した授業法を比較しました。その結果、CLIL を用いた授業法の方が、生徒たちがより意欲的に他の生徒とコミュニケーションを取るなど、生徒の意欲に深く関わる授業を行えたことが分かりました。尚この結果は、学内の中間発表と卒業発表の場で、2回発表させていただきました。
村上さんが実施されたアンケート解析結果

MATLAB でプログラミングを行うにあたり、どのような課題がありましたか?

やはり、関数の内容を理解するのに時間がかかった記憶があります。プログラムを書く際に、自分では間違っていないと思っていても、何度もエラーが出たりしました。特に、各数式がどういう意味を持つのか、また、この関数がどういう意味で、どういう結果をもたらすのかを理解するのに時間がかかりました。そのような1つ1つの処理の理解に時間がかかったことが主な課題でしたが、公式の説明ページ等も参考に少しずつ習得していきました。
「近傍成分分析」のMathWorks公式ドキュメンテーション

村上さんはエラーが出ても何度もめげずにチャレンジされていて本当に素晴らしいなと思っておりましたが、どういうところにモチベーションを感じていただきましたか?

そうですね、MATLAB を使うと簡単なコードでも分析結果がバッとすぐに綺麗に出るのが楽しかったという面はありますね。また、やはり卒業論文はしっかりと取り組まなければならないという責任感もありました。その2つが大きなポイントでしたね。

もし他の英語教育研究者や、もっと広い意味で文系の研究者の方へ向けてでも結構ですが、MATLAB の使用経験から「ここが良かった」といった点があれば、教えていただけますか?

難解な関数を使用する必要がありましたが、使い方を理解すれば結果を簡単に数値化や視覚的表示が可能で、研究内容や結果に説得力と妥当性をもたらせました。これは文系理系問わず、論文に説得力を加える点で大きな利点でした。以前の分析方法では定性的な部分もあったりと説得力に欠けることもありましたが、MATLAB の使用により、結果を明確に示せたことは大きなメリットです。

今回卒業研究をされたと伺いましたが、もうすぐ卒業されるのでしょうか。卒業後はどのようなことをされますか?

卒業後は地元に戻り、恐らく中学校の英語教員として働くことになると思っています。大学生活で得たCLIL などの知見を活かして、生徒がより意欲的に取り組める授業を実現したいと考えています。仕事以外の趣味の面では、もともとDIY にかなり興味があるので、ものづくりにも挑戦したいと思っています。その際、今回学んだプログラミングの知識を活かして、自動で物を動かせるような何かを作れればと考えています。

まとめ

村上さん、本日はありがとうございました!そして、佐々木雅子研究室の皆様や、秋田大学教育文化学部学校教育課程英語教育コースの学生の皆様にも、重ねて感謝申し上げます。この一年、佐々木雅子研究室の皆様には、英語教育に関するデータ解析のため、MATLAB による記述統計や推計統計、テキストマイニングなど幅広く取り組んでいただきました。普段とは異なる分野にも関わらず、プログラミングに熱心にチャレンジされる皆さんのお姿はとても美しく、私自身も大変励まされる時間でした。今後皆様の益々のご活躍を祈念しております!ありがとうございました。

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