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MATLAB R2025a の新しいグラフィックスとアプリ作成システム

※この投稿は 2025 年 6 月 10 日に MATLAB Graphics and App Building へ 投稿されたものの抄訳です。
Benjamin Kraus Guest Writer: Chris Portal
Chris Portal は、MATLAB のグラフィックスとアプリ作成チームのエンジニアリングディレクターを務めています。MATLAB におけるデータの可視化、アプリ作成機能、およびデータ探索ツールの提供を担当しています。Chris は 1997 年に MathWorks に開発者として入社し、MATLAB、Simulink、PDE Toolbox、またテストおよび計測分野の Data Acquisition Toolbox、Instrument Control Toolbox、Image Acquisition Toolbox のバージョン 1.0 など、いくつかの MathWorks 製品の開発と進化に関わってきました。

グラフィックスおよびアプリ作成機能の進化にとって重要なマイルストーンとなる大規模なアップデートを含んだ MATLAB R2025a を発表できることを大変嬉しく思います。このアップデートにより、当社のシステムは Java ベースのグラフィックス描画システムから WebGL ベースのシステムへ移行し、多くの改善と新たな可能性をユーザーの皆さまに提供します。

なぜこの変更を行うのか?

20 年以上にわたって、私たちの Java グラフィックスシステムは重要な役割を果たしてきましたが、技術的な蓄積によってユーザーのニーズに効率的に応えるのが難しくなっていました。WebGL テクノロジーへの移行は、まさにゲームチェンジャーです。WebGL は大幅に堅牢であることが証明されており、Java システムでよく見られたグラフィックスドライバ関連のクラッシュを排除します。この移行によって、安定性が向上するだけでなく、将来のウェブベースのワークフローを支える基盤も整います。MATLAB Online でのグラフィックスやアプリへの完全対応により、インタラクティブチャートをウェブで共有したり、アプリをシームレスにウェブに展開するなど、今後の新機能を可能にする体制が整いました。


R2025a の新しいポイント

 

 

Figure タブと Figure コンテナ

Figure は、デフォルトで MATLAB デスクトップ上の Figure コンテナ内にタブとして開くようになりました。この新しい Figure コンテナにより、Figure をより効率的に整理、探索、カスタマイズ、そしてコード生成できます。Figure はデフォルトでより大きく広いアスペクト比で表示され、タブを並べ替えてレイアウトを調整したり、ツールストリップを使って注釈を追加したりすることができます。

この新しい仕組みにより、複数のプロットを並べた比較がスムーズになり、デザインの試行錯誤、可視化の試行錯誤、統合的でインタラクティブな提示が簡単になります。

 

Figure 用の新しいツールストリップ

新しいシステムでは、Figure 用の新しいツールストリップが導入され、従来のファイルメニューやツールバーに代わります。以前のメニューやツールバーは機能が詰め込まれすぎていて、欲しい機能を見つけるのが難しくなっていました。新しいツールストリップでは、Figure 内のプロットやデータを操作するためのオプションが改良され、必要な機能が見つけやすく、使いやすくなっています。

このモダンなインターフェイスは、視覚要素のカスタマイズ、コンテンツのエクスポート、コードの生成といった作業をより直感的でタスク指向にし、新旧のユーザーどちらにとっても、マウス操作の回数を減らし、機能の場所を覚えなくても効率的に作業できるよう支援します。

 

グラフィックスとアプリのテーマ設定

R2025a では、ライトテーマやダークテーマを使用してグラフィックスやアプリを作成できるようになりました。プロットや UI コンポーネントをデフォルトの配色で作成すると、MATLAB が自動的に選択したテーマに合う視覚的に魅力的な色を適用します。この機能により、さまざまな環境での視覚的一貫性とユーザー体験が向上します。

このテーマ設定機能により、ユーザーの好みや組織のブランディングに合わせてアプリやビジュアライゼーションを作成できるようになり、明るい環境や暗い環境のどちらでも可読性とアクセシビリティを向上させることが可能になります。

 

新しいアプリ作成機能

R2025a では、洗練されたモダンでアクセシブルなユーザーインターフェースを簡単に作成できるよう、アプリ作成機能が強化されました。アプリでは、ライトおよびダークテーマのサポート、テーブルセルでの複数行コンテンツ表示、UI コンポーネント全体でのキーボード操作の改善が行われています。これらのアップデートにより、使いやすさが向上するとともに、MATLAB 環境により自然に溶け込むアプリを、より多くのユーザーにアクセス可能な形で開発できるようになります。

さらに、今回のリリースでは、MATLAB のアプリ作成ツールである GUIDE の正式な廃止と、App Designer への完全移行が発表されました。App Designer は、よりモダンでインタラクティブな設計環境、豊富なコンポーネントサポート、そして拡張性の高いアーキテクチャを提供しており、今後の MATLAB アプリ作成の推奨ツールとなります。

 

新しいプロット機能

R2025a では、以下を含むさまざまな新しいプロット機能が追加されました。

  • 極座標プロット:極座標系でパッチやサーフェスを作成できます。
  • バイオリンプロット:グループ化データのオプションが追加され、色グループの見た目をカスタマイズできます。
  • ボックスチャート:テーブルデータからボックスチャートを作成し、外観をカスタマイズできます。
  • スウォームチャート:スウォームチャートでジッター方向を制御できます。
  • 地理プロット:ベースマップの見た目が改良されました。

 

アクセシビリティの強化

さらに、新しいシステムはアクセシビリティを重視して設計されており、チャートやアプリ作成コンポーネントがスクリーンリーダーやキーボード操作に対応するようになっています。このアクセシビリティ標準への準拠により、MATLAB がより包括的な環境となり、障がいを持つユーザーもツールをより効果的に利用できるようになっています。

 

パフォーマンスとさらなる改善に向けて

グラフィックスシステムの中心には、多数の構成を可能にする豊富な関数とオブジェクトのネットワークがあり、これにより何百万ものユーザーが日々 MATLAB とやり取りしています。スムーズなパフォーマンスと将来の成長を支える継続的な改良のバランスを取ることが、私たちの取り組みの重要な焦点となっています。

この新システムへの道のりは、R2016a の App Designer ワークフローで最初のバージョンが導入されたことから始まりました。それ以来、各リリースで機能とパフォーマンスの両面で段階的な改善が行われています。R2025a の準備にあたり、私たちは数十社と連携して彼らが日々使用するグラフィックスのコードベースや高度なアプリを評価しました。これらの協力と広範なユーザビリティ評価を通じて、重要なワークフローが許容できるレベルで動作することを確認し、実際の使用状況に関する貴重な知見を得ました。

これらの取り組みを通じて、現時点でシステムは広範な利用に対応できる準備ができている一方で、利用パターンには幅広い違いがあることがわかりました。新しいプログラミング手法やソリューションの採用によって恩恵を受けるユーザーもいれば、引き続き改善が必要な領域もあります。これらの知見は、今後の指針となるだけでなく、ユーザーがよりクリーンで保守性の高い堅牢なコードを書くのにも役立っています。私たちはこれらの学びをまとめ、グラフィックスアプリを最大限に活用するためのベストプラクティス集を作成しました。

システムは広く採用できる準備が整っていますが、これは始まりに過ぎません。新しい WebGL ベースのグラフィックスシステムは、モダンなウェブ技術を活用した継続的な改善の扉を開きました。R2025b、R2026a そして可能な限り R2025a の Update 版にもさらなる改良が予定されています。

 

今後の展望

これはまだ始まりに過ぎません。今後数か月にわたり、グラフィックスおよびアプリ作成システムのさまざまな新機能を紹介する一連のブログ記事を公開していきます。これらの変化を最大限に活用する方法や調整が必要な点についてのガイダンスやリソースも提供する予定です。グラフィックスおよびアプリ作成ブログをフォローして、投稿をお見逃しなく!

私たちはこれらの変化がもたらす可能性に大きな期待を寄せており、この移行期間を通じて皆さまをサポートすることを約束します。ぜひ新しいシステムをお試しいただき、MATLAB デスクトップの新しいフィードバックボタンからご意見をお聞かせください。いただいたフィードバックは開発チームが監視するダッシュボードに直接送られ、トレンドや即時対応が必要な課題の特定に役立てられます。皆さまのフィードバックは、MATLAB の改良と強化を続けるうえで非常に貴重です。

 

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