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学生フォーミュラ2025大会支援 & MathWorks賞の結果発表

こんにちは、MathWorksの飯島です。今年も学生フォーミュラ大会のスポンサーとして、学生の皆さんの挑戦を全力でサポートしました。本記事では、2025年大会における当社の取り組みやサポート内容、そして「MathWorks賞」の結果をご紹介します。


学生フォーミュラとは?大会の背景と意義

学生フォーミュラ(Formula SAE Japan、FSAEJ)は、学生が車両設計・製作を通じて「モノづくり」の技術を学び、エンジニアとして成長するための場です。2003年の開始以来、国内外の大学チームが集まり、設計・解析・製造・検証といった一連のプロセスを経験することで、将来の技術分野で活躍するためのスキルを磨いています。

この大会は単なる競技ではなく、産学連携の実践の場です。企業が提供する技術やノウハウを学生が活用し、実際の開発現場に近い環境で課題解決に挑戦します。MathWorksは、モデルベースデザインを通じて、学生がより効率的かつ高度な設計を行えるよう支援しています。


大会概要

  • 正式名称:学生フォーミュラ(Formula SAE Japan)
  • 開催日程:2025年9月8日〜13日
  • 会場:Aichi Sky Expo
    今年も全国・海外から多くの学生チームが集まり、熱気あふれる6日間となりました。来場者数は約23,500名に達し、過去最大規模の盛り上がりを見せました。

MathWorksの取り組み(2025年9月10日〜13日)

展示デモブース:体験型シミュレーションでモデルベースデザインを実感

今年の目玉は、ハンドルベースの操作体験型デモです。昨年はコントローラ操作でしたが、今年はより実車感覚に近いハンドル操作を導入しました。
Simulink、特にVehicle Dynamics Blocksetを活用したリアルタイムシミュレーションで、SkidPadコースを再現。参加者は車両挙動を体感しながら、モデルベースデザインの可能性を実感しました。

デモのポイント

  • 実際の車両運動を忠実に再現するモデル
  • MATLAB/Simulinkによる制御設計の可視化
  • 操作体験を通じた「理論と実践の融合」


アンケート調査とノベルティ抽選

大会期間中、参加者や来場者から率直な意見を収集し、今後の支援活動に反映するためにアンケートを実施しました。この調査は、学生フォーミュラ大会やエンジニアリング支援に関するニーズを深く把握するための重要な情報源となり、来年度以降のサポートをさらに充実させる基盤となります。また、その結果を用いて需要の高い内容の講習会のネタにもしています。

さらに、アンケートにご協力いただいたチームには、MathWorksロゴ入りグッズや限定アイテムなど、学生に喜ばれるノベルティが当たる抽選会も行いました。200以上の学生様に本アンケートにご回答いただきました。


ピット訪問と講習会

大会期間中、ほぼ全てチームを訪問し、開発課題や技術的な悩みをヒアリングしました。
よくあった質問は:

  • 「ラップタイムシミュレーションをやりたい」
  • 「MATLABでどんなことができるのか知りたい」
    そしてその質問に応えるべく大会後は、EV制御、タイヤモデル構築、フルビークルモデリングなどの質問に対応するチーム別講習会を開催しています。

MathWorks賞 2025

今年も、特別賞の一環として、MATLABやSimulinkを効果的に活用したチームを表彰する「MathWorks賞」を実施いたしました。
評価基準は、モデルベースデザインのプロセスの体系化、モデル精度、実機検証の3点を重視しております。

1位、2位、3位のチームにはそれぞれ賞金が授与され、さらに優勝チームにはトロフィーも贈呈されます。
なお、他の賞と同様に、EV部門・ICV部門それぞれで、1位 2.5万円、2位 1.5万円、3位 1万円が用意されております。

今年ご参加いただけなかった方も、ぜひ来年以降のご参加をご検討ください。
下記に、今年度の受賞結果を記載いたします。

 

 


EV部門

  • 1位: 名古屋大学
    実データに基づくモデル構築と妥当性検証が丁寧に行われ、理論と実践の両面から高い完成度を示すとともに、制御手法や最適化の工夫、リアルタイムシミュレーションへの応用など、限られたリソースの中で最大限の成果を追求する姿勢が素晴らしく、今後の実機検証やさらなる最適化への展開にも期待ができました。
  • 2位: Jilin University
    モデルベースデザインを活用し、BMSの設計から検証まで一貫して高い完成度を実現するとともに、SimulinkやStateflow、データディクショナリなど多様なツールを効果的に使い分けて効率的な開発と高い信頼性を両立し、部品単位・システム単位での妥当性検証を徹底して実車テストでも問題が発生しない堅牢なシステムを構築しており、今後はSOH推定や車両モデルとの連携などさらなる発展も期待ができました。
  • 3位: Prince of Songkla University
    トルクベクタリング制御やタイヤモデル、バッテリー・モーターの消費電力解析などEV車両開発における多角的かつ実践的なアプローチが印象的で、実車データを活用した検証やシミュレーションモデル拡充への意欲から技術力と成長性が感じられ、初EV車両ながら制御・解析・検証の各工程に積極的に取り組む姿勢や日本のトップチームにも挑戦する意欲は、国際的な競争力と今後のさらなる発展を期待させました。

 


ICV部門

  • 1位: 同志社大学
    目的と動機が明確で実機検証まで行い、ダウンフォースの効果を理論と実測の両面から示して他チームが求める情報を的確に得るとともに、改善点や今後の課題を把握して継続的成長が期待でき、チームとしてV字開発プロセスを意識した設計から検証までの一貫した取り組みを行うなど、モデルの作成から結果検証まで平均して完成度が高く他チームの参考となる成果を上げています。

 

  • 2位: 九州工業大学
    7自由度の車両モデルを一から自作し細部まで作り込む高い技術力を示すとともに、実機データとの比較による妥当性検証でシミュレーションの信頼性を確保し、強化学習など先進的技術の導入にも積極的に取り組み、V字開発やモデルベースデザインを意識した体系的な設計プロセスに基づき、シミュレーション結果を車両設計に論理的に反映して目標達成に向けて取り組む姿勢が非常に優れてい  ます。

 

  • 3位: 広島工業大学
    車体横曲げ合成を考慮した独自モデルを構築し、実車データとの比較検証を通じて設計改善に結びつける高い成果を示す一方で、サスペンションジオメトリやパワートレイン、タイヤの縦横連成など部品単体の物理的妥当性検証や詳細モデル化は今後の課題であり、実車開発への反映や軽量化・剛性向上など着実な成果を踏まえつつ、より高精度なモデル構築と多角的な実証・検証による全体最適化と複合性能指標への展開が期待されました。

皆さんへのエール

受賞された皆様、本当におめでとうございます!
今回の成果は、皆さんが積み重ねてきた努力と、課題に挑戦し続ける強い意志の結晶です。限られた時間やリソースの中で、設計・シミュレーション・検証といった複雑なプロセスをやり遂げたことは、非常に価値のある経験であり、今後のキャリアにおいて大きな財産となるでしょう。
そして、今回の大会に参加してくださったすべての学生の皆さんにも心からの敬意を表します。結果に関わらず、皆さんが挑戦した過程そのものが、未来のエンジニアリングを支える力になると確信しています。車両設計や解析、チームでの協働を通じて得た知識や経験は、必ず次のステップにつながります。
MathWorksは、皆さんの情熱と創意工夫に深く感銘を受けています。これからも、学生フォーミュラを通じて皆さんの成長を全力でサポートし、共に新しい技術の可能性を広げていきたいと考えています。
改めて、受賞チームの皆様、そして大会に参加されたすべての学生の皆様に心からの祝福と感謝をお送りします。


今後の展望

MathWorksはこれからも学生フォーミュラを通じて、次世代のエンジニアの成長を応援していきます。来年度は、車両開発に焦点をあてた講習会をさらに充実させ、学びの機会を広げていく予定です。引き続きご支援のほどよろしくお願いします。

 

 

 

 

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