AI エージェントにエンジニアの実践知を伝える
※この投稿は 2026 年 10 月 27 日に Artificial Intelligence へ 投稿されたものの抄訳です。
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ゲストブロガー:Akash Gopisetty ゲストブロガーとして、レーダーおよび信号処理分野のプロダクトマーケティングマネージャー、Akash Gopisetty をお迎えします。再利用可能なスキルによって、AI エージェントが確立されたエンジニアリング手法に従えるようになる仕組みを紹介します。 |
AI エージェントをエンジニアリングツールに接続すると、使い慣れたエンジニアリング環境の中で、コードの作成、ワークフローの実行、結果の評価を行えるようになります。これにより、結果を確認し、テストし、検証することができます。

Figure 1: エンジニアリングツールを AI の基盤にする
ただし、エンジニアリングツールにアクセスできるだけでは、専門的な工学の問題を解くために必要な分野固有の知識はエージェントに備わりません。そこで役立つのがスキルです。
経験豊富なエンジニアが問題にどう取り組むかを記述するための手段がスキルです。特に、無線通信、信号処理、RF・アンテナ設計などの技術分野で有用です。こうした分野では、妥当なアプローチが複数存在することがあり、適切な選択は、その分野固有の前提条件、手法の選定、エンジニアリング上のトレードオフによって変わります。たとえば、RF やアンテナのエンジニアは、周波数、利得、カバレッジ、偏波に関する要件を、さまざまなアンテナやアレイの構成に落とし込む必要があります。また、インピーダンス整合、相互結合、アレイの影響を考慮し、設計結果がシステムレベルの性能要件を満たすかどうかを評価する必要もあります。スキルを使ってこうした考え方を記述し、ワークフローに沿ってエージェントを導くことで、エンジニアは設計上の選択肢のレビューと最終設計の判断に集中できます。
エンジニアは、プロンプトのたびに適切な手順をエージェントに探させたり推測させたりする代わりに、実証済みの手法をスキルとして明文化し、ほかの成果物と同様にバージョン管理して、関連するワークフローや互換性のある AI エージェント間で再利用できます。
スキルは、ワークフローに次のような要素が求められる場合に特に有用です。
- 専門知識:デジタルフィルターの設計、規格に準拠した無線波形の生成、モデルのキャリブレーション、テストの開発などのタスクに対して、適切なアプローチを定める前提条件、計算、ツールの選択、検証手順
- 一貫性とトレーサビリティ: ほかのエンジニアリング成果物と同様に、手順をレビュー、テスト、検査、改善できる、再現可能なワークフロー
- 再利用性: 指針を一から作り直すことなく、プロジェクト、チーム、互換性のある AI エージェントをまたいで同じエンジニアリングプロセスを適用できる、持ち運び可能な仕組み
MATLAB でエージェント型 AI のスキルを使う:
MATLAB Agentic Toolkit を使うと、AI エージェントを MATLAB に接続できます。MATLAB がガードレールのように機能することで、エンジニアは AI エージェントを使って検証可能な結果を得ることができます。レーダー、通信、RF、ミックスドシグナル設計などの技術分野に向けて、このツールキットには再利用可能なスキルのカタログも含まれています。

Figure 2: AI エージェントを MATLAB に接続する
タスクごとに個別のスキルを選ぶ必要はありません。業務に関連するスキルグループをインストールすれば、エージェントは依頼に基づいて適切なスキルを見つけ、適用できます。
| スキルグループ | ワークフローの例 |
|---|---|
| レーダー |
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| レポート作成とデータベースアクセス |
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| RF とミックスドシグナル |
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| ロボティクスと自律システム |
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| 信号処理 |
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| 試験・計測 |
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| 無線通信 |
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Table 1: MATLAB Agentic Toolkit の主なスキルグループとワークフローの例
実際の設計課題にスキルを適用する
これらのスキルを実際に試してみましょう。通信とレーダーセンシングの両方に同じインフラストラクチャと周波数帯域を利用する無線システムを考えてみます。 一般にセンシングと通信の統合(ISAC、Integrated Sensing and Communication)と呼ばれるこのアプローチでは、システムはデータをやり取りしながら、カバレッジ内にある物体を検出し、位置の特定を行いますが、無線周波数帯がひっ迫するにつれて、ISAC の重要性はますます高まっています。
この例では、ISAC 基地局は28 GHzで動作し、隣接するシステムと共有する周波数帯で通信しながら、カバレッジ内のターゲットを検知する必要があります。センシング波形は、要求される距離分解能を確保し、距離サイドローブを低く抑え、隣接システムが使用する帯域部分に含まれる送信エネルギーを最小限にする必要があります。
依頼内容:エージェントには、システムの目標を説明する1つのプロンプト(下記)を与えましたが、具体的な関数や望ましい設計手法は意図的に記載しませんでした。コードを実装する前に計画を立てるよう、エージェントに依頼しました。 MATLAB Agentic Toolkit に含まれるスキルは、エージェントが適切なツールとワークフローを選ぶ助けになるはずです。
ISAC システムに取り組んでいます。28 GHzの基地局パネルで、隣接する事業者が帯域の一部を使用している状況でも、カバレッジ内のターゲットを検知する必要があります。 距離分解能が2 mで、距離サイドローブを40 dB未満に抑え、相手のシステムが動作する掃引帯域中央の100 MHz区間に入るエネルギーをできる限り少なくするパルス状のセンシング波形を、MATLAB で設計してください。コードを書く前に、アプローチを説明してください。
ここでは、OpenAI Codex が関連する MATLAB およびレーダー波形設計のスキルを見つけて適用します。これらのスキルには、この問題に対する決まった答えが含まれているわけではありません。代わりに、要件を波形パラメーターに落とし込む方法、設計上のトレードオフを評価する方法、最終設計が目標を満たすことを示す根拠を得る方法など、エージェントが従うべきエンジニアリングプロセスを提供します。

Figure 3: AI エージェントが適用すべき関連スキルを特定

Figure 4: MATLAB 関数と System object を使用する、AI エージェントからの計画案
ターゲットの特性を明確にするため、システム要件をいくつか追加しました。
ターゲットの移動速度は最大30 m/sです。対象物との最大距離は600 mです。

Figure 5: 追加のシステム要件

Figure 6: AI エージェントが MATLAB スクリプトを作成、実行、テスト

Figure 7: MATLAB で得られたプロット:I/Q データ、スペクトル、パルス圧縮応答、ドップラー耐性
結果:4つのパネルは、生成された波形が提示されたすべての要件を実際に満たしていることを示しています。つまり、エージェントはスキルを使って MATLAB コードを作成し、実行できました。送信スペクトルを見ると、隣接システムへの干渉を避けるため、保護対象の100 MHz 帯域が50 dB以上抑制されていることがわかります。パルス圧縮応答では、メインローブが距離分解能2 mの要件内に収まり、ピークサイドローブは約55 dBも抑制され、これは要求値よりも15 dB も良好な性能です。ドップラー特性の曲線は、30 m/s の速度に対して数 kHz 程度の無視できるほど小さい損失しか生じていないことを示しています。
スキルによって何が変わったか:AI エージェントに一からプロセスを考えさせる代わりに、スキルが、制約を踏まえた信頼できるエンジニアリングの指針を提供しました。スキルは、システム要件から波形パラメーターを導出し、適切なスペクトル整形手法を選び、得られた設計が分解能、サイドローブ、ドップラーに関する制約を満たしながら設計結果を検証するよう、エージェントを誘導します。これにより、エンジニアが設計と検証のすべての手順をプロンプトで指定することなく、より再現性が高く検証可能な結果が得られました。また、デバッグの試行を2回までに制限することで、エージェントが成果の出ないループに陥るのを防ぎ、解決に至らなかった問題についてはエンジニアに戻して、レビューと判断を仰ぐ仕組みとなっています。
エンジニアの仕事の進め方をエージェントに教える
これは、エンジニアが AI とより効果的に協働する方法を示しています。 毎回のプロンプトに手順全体を書き込む代わりに、エンジニアは要件、制約、設計上の判断に集中できます。 再利用可能なエンジニアリング手法をスキルとして提供し、ワークフローの実行はエージェントが担い、そして、エンジニアは根拠をレビューした上で、最終判断を下せばよいのです。
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