MATLAB ユーザーコミュニティー

MATLAB & Simulink ユーザーコミュニティー向け日本語ブログ

遠隔教育・オンラインで授業を続けるには

こんにちは、道家です。ふと気づいたら1カ月以上の在宅勤務となっていて、社内ではどう運動不足を解消しているか、どのような椅子が一番体に負担が無いか、という話で盛り上がっている今日この頃です。体力的に、精神的に負担がかかる日々が続いていますが、皆さんも元気に乗り切っていることと願っています。

さて今日は、COVID-19 の状況で授業をオンライン・遠隔に移行しようとしている先生方に有益な情報を提供したいと思います。先月末に Loren のブログで “Keep Teaching through Distance Learning” という記事が投稿されましたが、その内容を補足を交えつつ紹介したいと思います。

Lorenのブログで取り上げられているトピックは以下の5つです。

では、もう少し詳しく見ていきましょう。

MATLAB ライブ スクリプト

オンライン授業となると、お互い顔や画面が見えない状況なので、なるべく学生各自が手を動かして学べるような教材が必要になってきます。そこで活用できるのが MATLAB ライブ スクリプトです。ライブ スクリプトは R2016a から存在するものですが、使ったことがない方はぜひこの機会に使ってみてください。名前の通り、この「生きたスクリプト」は MATLAB コードを含めた実行可能なノートブックです。授業で教える内容(理論の解説や数式、説明用の図表など)を MATLAB コードと共にライブ スクリプトに盛り込み、そのまま実行して結果をスクリプト上で確認できます。さらに、ライブ スクリプトは対話的に操作できるコントロールを追加することも簡単にでき、学生が容易にパラメーターを変更して結果を確認できます。

以前投稿した “Live Script を使ったインタラクティブな微分方程式の授業” もぜひご覧ください。

MATLAB アプリ

ライブ スクリプトと同様、MATLAB アプリを使用すると学生が探究的に学習できるアプリを提供できます。製品には様々な分野向けのアプリがありますが、App Designer で新しくアプリを作成することも可能です。

既存のアプリ

App Designer

MATLAB Mobile

オンライン授業となると厳しくなるのが実験科目です。実験器具が大学にしかない場合、学生にそれぞれ実験をしてもらうのはなかなか難しいかと思います。そんな時に使えるのが MATLAB Mobile です。勿論、すべての実験科目に使えるわけではありませんが、ほぼすべての学生が持っているスマホは、手軽なセンサー デバイス(加速度、GPS、磁場、など)として使えます。MATLAB Mobile はスマホのセンサーからデータを直接収集することができます。もちろんカメラから取得した画像も読み込めます。File Exchange にいくつか活用例がありますのでご覧ください。

また、MATLAB Mobile で解いた課題の提出には、後で紹介する MATLAB Drive がオススメです。詳しい操作方法は以下の「MATLAB Drive を使用して MATLAB Mobile で作成したプログラムを共有する方法」をご覧ください。

オンライン コース

学内での演習ができないとなりますと、学生が自己学習できるコンテンツが必要になってきます。MathWorks のオンライン トレーニングには2時間程度で学習できる、MATLAB入門機械学習入門ディープラーニング入門Simulink入門Stateflow入門があります(すべて無償で受講できます)。これらのコースはただの動画だけではなく、ウェブ上で動くMATLAB Onlineを使用した演習問題も含まれています。その他、大学によっては更に深い部分まで学習できる長めのコースや計算数学に関するコースもあります。

また、コースのコンテンツは章単位で授業に盛り込むことが可能です。例えば、ディープラーニング入門4章「転移学習の実行」だけを授業の一部に利用することができます。授業で MATLAB の操作を教える時間が無い場合は、ぜひ MathWorks のオンライン コースを活用ください。

MATLAB Tech Talks

MATLAB Tech Talks は、基本的な理工系トピックに関して解説するビデオシリーズです。ビデオは英語ですが、一部日本語字幕があります。MathWorks 製品の使い方よりも理論の解説が中心です。例えば、Understanding PID Control では PID 制御の概念からパラメーターチューニングやモデル作成の話までを7本のビデオ(計80分)で紹介します。

MATLAB Grader

MathWorks が提供しているオンライン コース以外に独自の演習問題を作成したい場合は MATLAB Grader をお使いください。MATLAB Grader では MATLAB の演習問題を作成することができ、学生が提出した答えに対して自動採点を行います。学生は瞬時に正解・不正解のフィードバックがもらえますので、自己学習に適しています。また、教員は学生の進捗を確認できるので、どこで学生が躓いているかを確認することができます。

Cody

MATLAB のプログラミング スキルを身に付けて欲しい時に、どうされていますか?MATLAB プログラミングの授業があればいいのですが、特にそのような授業が無い場合は別の方法が必要となります。先ほど紹介したオンライン コースや MATLAB Grader でスキルを身に付けてもらうこともできますが、ゲーム感覚で学べると良いと思いませんか?Cody はまさにゲーム感覚でプログラミングを習得できるコミュニティー ツールです。基本的なものから、応用系や分野に特化したものなど数千問の問題があります。解いた問題数などによってバッジを取得できるので、モチベーションも上がります。

MATLAB Online

演習室での授業ができなくなりますと、学生が使う MATLAB の環境が重要になってきます。MATLAB のライセンスがあると、デスクトップでの利用の他に、ウェブ上で動く MATLAB Online の利用も可能になります。MATLAB Online を使うと、インターネットへの接続さえあれば良いのでパソコンの性能は関係なくなります。現時点では残念ながら Simulink は使えませんが、MATLAB系のツールボックスはほぼすべて使えます。また、Google Chrome を使うと、ウェブカメラからの画像読み込みが可能になります。

これからも分かりますように、UI は日本語になってます(R2020aから)。使いやすくなりました!もし MATLAB Online を開いても英語表示のままの方はブラウザーの設定変更が必要かもしれません。詳しくは以下の「MATLAB Onlineの始め方と言語設定の方法」をご覧ください。

MATLAB Drive

ここまで、MATLAB Online や MATLAB Mobile などデスクトップ以外の環境で動く MATLAB について紹介してきました。このように様々な環境で MATLAB を動かせるのは便利なのですが、データやプログラムを容易に共有できることが必要となってきます。そこで活躍するのが MATLAB Drive です。これはクラウド上にある MATLAB 専用のファイルシステムです。MATLAB のライセンスを持っている人には 5GB のストレージが提供され、MATLAB デスクトップ、MATLAB Online、MATLAB Mobile をすべて繋ぎます。MATLAB Online と MATLAB Mobile は既定で MATLAB Drive が使われますが、MATLAB デスクトップと同期させるには MATLAB Drive Connector をインストールする必要があります。手順の詳細については以下の「MATLAB Drive Connectorのインストールと設定方法」をご覧ください。

MATLAB Drive のもう一つの役割は他の MATLAB ユーザーとのファイル共有です。先生からの課題の共有、学生からの解答の共有が MATLAB 内から直接できちゃいます。詳しくは以下の「MATLAB Drive を使用してMATLAB Online/デスクトップで作成したプログラムを共有する方法」をご覧ください。

最後に

最後に2点あります。

“MATLAB を活用した授業” コース

この記事で紹介した殆どの機能を実際に操作しながら学べる教員向けのオンライン コース “MATLAB を活用した授業” をぜひ受けてみてください。2時間程度でライブスクリプトの作成、MATLAB Online の操作、MATLAB Drive でファイルの共有、オンライン トレーニングの確認、MATLAB Grader の使用を一通り体験することができます。

Distance Learning Community

この記事で取り上げた情報や遠隔教育に関してのディスカッションをする新しいコミュニティーサイト Distance Learning Community を立ち上げました。英語のサイトですが、日本語でのディスカッションも可能なのでぜひフォローしてください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。少しでもオンライン授業、遠隔授業への移行に役立てていただければ幸いです。

コメントやご質問がありましたら、遠慮なくコメント欄よりご連絡ください。

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