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MATLAB R2025a の大幅アップデート — その理由と背景

※この投稿は 2025 年 5 月 16 日に The MATLAB Blog へ 投稿されたものの抄訳です。
自己紹介: こんにちは、Michelle です。MATLAB があなたの期待に応えられないとき(dark mode の件など)に責任を取る女性として知っている方もいるかもしれませんし、派手なプレゼンテーションをする人、あるいは Scott and Doug’s Pick of the Week ブログ(知っている人は知っているかも・・)の創設者として MathWorks 初のブロガーとして覚えている方もいるでしょう。長年 MATLAB のプロダクト責任者を務め、今は非公式ながら「MATLABらしさ」の責任者を自認しています。MATLAB を使った素晴らしい体験を提供することが私の役割です。
すでにご存知かもしれませんが、R2025a でリリースされた新しい MATLAB デスクトップには、多くの素晴らしい新機能があります。ダークモード、必要なツールにすぐアクセスできるカスタマイズ可能なボタン、タブ付き Figure 、テストの実行、ソース管理との連携など、さまざまな用途に対応した多数のサイドパネルが追加されています。すでに R2025a や、過去 2 年間に提供した多くのベータ版のいずれかで、これらの機能を使ったことがあるかもしれません。あるいは、MATLAB Online 上でこうした機能の多くはすでに使っていたので、「何がそんなに話題になってるの?」と思っているかもしれません。
もしあなたが熟練 MATLAB ユーザーであれば、おそらく気に入った点もあるけれど、少なくとも1つはちょっと(あるいはかなり)その逆だと感じる点があるのではないでしょうか。実際、多くのことが大きく変わっているため、何年も慣れ親しんできた方法とは異なるやり方を、新たに覚える必要があるかもしれません。たとえ新しい方法がより良いものであっても、「違う」ということには変わりありません。そして中には、「これは改良とは言えない」と感じる部分もあるかもしれません。たとえば、以前とまったく同じようにデスクトップを構成できなかったり、アプリのレイアウトを微調整しなければならなかったり、動作が遅く感じられたりするかもしれません。
そこで今回は、私たちがこうした変更を行った背景を少しご紹介したいと思います。これを読んでも、特定の変更に対する印象がすぐによくなるとは限りませんが、「MathWorks は今、そしてこれから先も、皆さんにとって最高の MATLAB 体験を提供できるように全力を尽くしている」ということを感じていただければ嬉しいです。

Web に対応した技術への移行

R2025a は、MATLAB デスクトップおよびグラフィックスシステムを Java から JavaScript と HTML に置き換えるという、大規模な再構築を行ったリリースです。また、画面に表示される「フロントエンド」と MATLAB の実行部分である「バックエンド」を分離する新しいアーキテクチャに移行しました。これらの変更により、MATLAB は「Web フレンドリー」になり、デスクトップと同じように Web 上でも快適に動作できるようになりました。
Java とは長い付き合いでした。MATLAB のデスクトップとグラフィックスは約 20 年間、Java によって支えられてきました。Java の大きな利点の一つは、Windows、Mac、Linux のすべてで動作する(ほぼ)単一のコードベースを実現できることでした。これは、開発者が Windows と Mac 両方のマシンを使って別々に対応しなければならなかった時代からすると、大きな進歩でした。このおかげで、すべてのプラットフォームで同時にリリースを継続的に行うことが可能になり、開発者は同じ機能を複数回書く代わりに、より多くの新機能の開発に時間を使えるようになったのです。
今回の大きな変化は、Web やクラウドが、Windows、Mac、Linux と並ぶ、MATLAB ユーザーにとって重要なプラットフォームになったという点です。これは多くの方にとって意外かもしれませんが、昨年は 280 万人以上が MATLAB Online を利用しました。これは、Mac および Linux にローカルインストールされた MATLAB の利用者数を合わせた数よりも多い! MATLAB Online の重要性が高まる中、私たちは再び、デスクトップ版とオンライン版で機能を別々に開発しなければならないという、かつてのような状況に直面していました。しかし今回の新しいデスクトップとグラフィックス環境により、Windows、Mac、Linux、そして MATLAB Online のすべてで、再び(おおよそ)単一のコードベースによる開発が可能となったのです。

Web フレンドリーな技術への移行により、従来の MATLAB Online にとどまらず、さまざまなことが可能になりました。たとえば、以下のようなことが実現しています。こうした拡張性は、Web フレンドリーな基盤を整えたことで初めて実現できたものです。

今後もこのリストは拡大していくと考えています。皆さんが必要とする場所で MATLAB を使える柔軟性をさらに高め、Web とデスクトップ間のワークフローの連携もよりシームレスにしていくつもりです。特に私が力を入れているのは、フロントエンドとバックエンドの分離に関する取り組みです。これに伴って、関連する API を今後さらに正式な形で整備・文書化していく予定です。その初期の例の一つが、MATLAB Language Server です。これは Microsoft の Language Server Protocol(LSP) を実装したもので、Visual Studio Code 用の MATLAB 拡張機能を支えるために開発しました。また、他のユーザーによって Neovim エディターとの統合も行われています。私たちは、Microsoft が VS Code で行っている素晴らしい取り組みから多くのインスピレーションを得ています。たとえば VS Code では、「フロントエンド」としてデスクトップでもブラウザでも利用でき、「バックエンド」の計算処理はローカルマシン、リモートの高性能な作業用マシン、またはクラウド上で行うことができます。
こうした機能は、今すぐの自分には関係ないと思われるかもしれません。しかし、あらゆる兆候が示しているのは、将来的にはこれらの機能の重要性が確実に高まるということです。最も慎重な企業でさえ、さらには 米国国防総省ですら、クラウドベースのワークフローを採用し始めているのです。

デスクトップデザインの進化

最先端の開発環境のデザインは、過去20年で大きく変化しました。現代の開発環境はすばやく起動し、作業に集中しやすいシンプルなデザインを備え、必要なツールを自由にカスタマイズできる拡張性を持っています。そしてもちろん、ダークモードにも対応しています。
こうした変化を踏まえ、私たちは新しい MATLAB デスクトップを構築する際に、20年前に作られた既存のデザインを単にコピーするのは適切ではないと判断しました。私たちが目指したのは、「MATLAB デスクトップを現代的に刷新しつつ、従来の重要な機能やワークフローをしっかり維持する」というチャレンジです。簡単なことではありませんでした。なぜなら、皆さん一人ひとりが、日々使っているツールに対して、自分なりの使い方や好みを築いてきたからです。
本当にユーザーにとって良い変更かどうかを確かめる唯一の方法は、実際にソフトウェアを使ってもらうことです。だからこそ、私たちはそうしました。過去2年間にわたり、新しいデスクトップの長期ベータテストを実施し、ユーザーの皆さんが日常的な MATLAB の利用に新しいデスクトップを取り入れていく中で、何千件にもおよぶフィードバックを収集しました。また、私たち自身も日々このデスクトップを使ってきました。何千人もの MathWorks エンジニアが新しいデスクトップで MATLAB の開発・テストに日々取り組んでいたのです。そして断言できますが、私たちのエンジニアは「うまくいっている点」「気に入らない点」について、遠慮なく率直に意見を伝えてくる人たちです。

旧デスクトップに戻すオプションはありません

よく聞かれる質問のひとつが、「旧デスクトップに戻すことはできないの?」というものです。答えは 「できません」。旧デスクトップに戻す唯一の方法は、R2024b を使用することです。

私自身、この点についてエンジニアリングチームに強く問いかけました。私はどちらかというと慎重な性格なので、移行をもっと段階的に、もっと選択肢を持たせた形で進められないかと考えていました。実際、いくつかの代替的なリリース戦略も検討しました。しかし最終的には、それらの方法はすべて現実的ではないことが分かりました。理由は、ベータ版から本格的な製品版へと移行するにあたり、MathWorks の高い品質基準を満たす必要があったからです。そのためには、テストや開発のリソースをすべて新しいデスクトップに集中させなければならず、旧デスクトップの選択肢を残す余地はありませんでした。最高の体験を皆さんにお届けするために、新デスクトップの開発に全力を注ぐ必要があったのです。

ぜひ試して、感想を聞かせてください

私は個人的に、R2025a は本当に素晴らしい出来だと思っています。もちろん完璧ではありません(※)。でも、旧デスクトップを使わなければならない場面になると、ちょっとつらい気持ちになります。たとえば、新しいプロジェクトインターフェースが本当に気に入っていて、もはやそれなしでは MATLAB でまともな作業をしたくないほどです。それに、ソース管理パネルやテストパネルも重宝しています。最近、少しでも信頼性の高いコードを書くために、ソフトウェア開発の実践を改善しようとしているのですが、それらの機能がとても役に立っています。さらに、サイドパネルを論理的なグループにまとめ、ワンクリックで切り替え・展開・折りたたみできる機能も、かなり便利で手放せません。

最初は新しいデザインや操作に慣れるまでに少し時間がかかりましたが、慣れてしまえば、その価値は十分にあると感じています。

……とはいえ、これはあくまで私の意見です。ぜひ皆さん自身で試してみて、どんな印象だったか教えてください。 新しいデザインや機能をじっくり使い込んでみることで、自分なりの使い方を見つけていただければ嬉しいです。

今回のリリースは、皆さんのようなユーザーからの貴重なフィードバックなしには実現できませんでした。 皆さんからの意見が、デザインの洗練や問題解決の優先順位づけに大きく役立ったのです。そして実際、フィードバックがあまりにも有用だったため、今回初めて、MATLAB デスクトップ上に「フィードバックボタン」を設置することにしました。

私たちは、製品に関するあらゆるご意見を歓迎しています。どんな些細なことでも構いませんので、ぜひ率直なフィードバックをお寄せください。皆さんの声を聞くのを、心から楽しみにしています。新たに追加された フィードバックボタン を使って送っていただいても良いですし、以下のコメント欄にご意見を投稿していただいてもかまいません。

※ちなみに補足しておくと、私の仕事は「MATLAB はまだまだ良くできる」と常に考えることなんです!

 

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